Designated Producers

2012年度神戸肉枝肉共励会・名誉賞
「太田牧場」太田克典さん

兄と弟、二人三脚で歩んだ道のり
神戸ビーフをはじめとする黒毛和牛のセリが行われている、ある日の神戸西部市場。肉牛の生産者や仲買人が集まるこの場所で、次々と競り落とされる枝肉を、ひときわするどい眼差しで見守る太田克典さんの姿があります。神戸肉枝肉共励会において、2011年と2012年の2回連続で名誉賞を獲得し、周囲を驚かせた作り手です。 そんな太田さんの牛をほぼ一手に買い上げているのが、精肉店および焼肉店「太田家」を複数経営する弟の太田哲也さん。牧場で育った「牛飼いの子」として商売を始めて13年。店の成長と歩調を合わせるように太田牧場も躍進してきました。
「格付けや枝肉の断面だけ見てもホンマの値打ちは判断できんから、牛の血統から体つきまで全部自分の目で確かめて枝肉を買うし、それを毎日自分でさばいて肉質や脂の質を確かめてる。ただの肉屋やない、牛飼いがやってる肉屋やからね。」と自信をのぞかせる哲也さん。弟の目から見ても、肥育農家としての兄は「技術も日に日に進歩して、今、最高に充実していると思う」と太鼓判を押します。
牛飼いの極意は「血筋を読む」こと
弟・哲也さんは、ただ肉をさばいて販売するだけではありません。血統などのデータと、自分が精肉店の現場で確かめた肉質との関係性をつねに観察し、その情報を毎日、兄・克典さんにフィードバックしています。それは、A5-12という最高ランクの神戸ビーフを年間10頭以上も作りだしている太田牧場の最大の強み。
「血筋を読む、ということやね。血統は掛け合わせによってどんどん変わっていくから、先を読んで、あれは“買い”やとか、これはあんまりよくない、というふうに、次の子牛買いの時に役立ててもらう」と哲也さんが言えば、克典さんは「ワシはさばいたり売ったりする立場とは違うから、その情報はほんまに役に立ってる。かといって子牛買いは情報だけでもあかん。最後は目利き勝負や」。そう語りあう二人の姿に、息の合った兄弟の関係が伺えます。
たえず進化を続けるという意志
牧場の仕事に身を投じてから約20年。弟からの褒め言葉に反して、克典さん本人は「到達点に達したという手ごたえを感じたことはまだない」と言います。
「血統も変化するし、狙いを定めて子牛を買っても、結果が出るまでに2年かかる中で、牛自体も日々変わる。“前はこれがよかったから”というような考えで同じことを繰り返しとったらアカン」。名誉賞2連続という快挙にも、克典さんは冷静そのもの。
毎年100頭ペースで牛を増やし、今では約1100頭を保持するまでになった太田牧場。子牛の見極めから、えさの配合、日々の牛たちの健康管理にいたるまで、よりよい神戸ビーフの品質を求め、立ち止まることなくたえず進化を続けようという意志がそこにあります。

セリを終えた兄・克典さん(右)と弟・哲也さん(左)。この日の枝肉の中でも最高級の自信作を前に。