Designated Producers

2009年度神戸肉枝肉共励会・名誉賞
「中西牧場」中西義徳さん

安全な牛づくりひと筋に
神戸市西部の人里離れた山あいに位置する牧場。ここが、年間約15頭ものチャンピオン牛を輩出する、牛づくりのカリスマ・中西義徳さんの仕事場です。 「一番大事なのは、自分の家族や孫、友だちが、毎日でも安心して食べられる安全でおいしい肉を作ること」と語る中西さん。さかのぼること30年前、現在のように「無農薬」や「減農薬」の農作物が注目される以前から、牛の飼料である牧草の安全性に着目し、できるだけ農薬を使わない理想の牧草を求めて、海外に何十回も視察に飛んできたという経験の持ち主です。こだわりの結果たどり着いたのは、アメリカの契約農家で作られる数種類の牧草。これを牛の状態に応じて微妙にブレンドを変えながら与えます。「そのおかげでここ10年の牛の品質の安定度は、県内でもトップだと思う」と自信をのぞかせます。
最高の牛を作るためには
選び抜かれた飼料と、地下140mからくみ上げる良質の天然地下水。山地の起伏を生かした風通しのよい牛舎。さらに加えて中西牧場の強みは、子牛が成長するにしたがって、同じ柵の中に同居させる頭数を8頭、4頭、2頭、と徐々に減らしていき、出荷が近づいた成牛は個別の1頭飼いにする点。
「とにかく但馬牛は非常に繊細。ストレスを与えるといい牛はできないんですよ。時には集団に合わない牛、喧嘩の多い牛も出てくるから、牛同士の相性や個々の性質を見極めて、早めに1頭飼いにしたりね。それから出荷前の牛を1頭飼いにするのは、個別にえさの食べ方を観察して体調を把握してやれるから」。牛1頭ずつにきめ細かくケアを注ぐからこそ、年間肥育頭数は増やせないとか。
「そういうことを気にしない育て方だってできるんですよ。でも最高の牛を作るためには人がやらないことをしないと。牛は1頭1頭みんな違うんやから、もと牛がいいだけではダメで、こっちも持てる技術を100%出し切って育てないと」
脂の質のDNAが違う
自分の作る牛肉だけでなく、常に様々な牛肉を食べ歩き、研究を重ねているという中西さん。その経験から言っても、「神戸ビーフは脂の質のDNAが違う。神戸ビーフの霜降りは量を食べても胸焼けしないし、肉本来の甘みがある」と言い切ります。
ちなみに、但馬牛から最高ランク(A-5クラス)の神戸ビーフが出現する率は例年だいたい10%程度ですが、中西牧場の場合、その出現率はなんと60%にものぼるとか。驚異的な実績を挙げながらもなお「うちから出荷する全頭数、できるだけ味を統一してバラつきをなくしたい」と常に高い目標を掲げる中西さん。息子さんに牧場主の座を譲った今も、牛づくりにかける情熱はとどまることを知らないようです。

高校卒業と同時に、家業だった肥育農家の仕事に身を投じて、早40年近く。今は息子さんとともに牧場を切り盛りする。